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医療におけるプライバシー保護ガイドラインに対する意見



 このページは、医療改善ネットワーク(MIネット)の「医療におけるプライバシー保護ガイドライン」について寄せられたご意見の中から、掲載を承諾していただいたものを掲載しています。


1 中山さん(大阪府立成人病センター調査部疫学課)  2000.1.12

初めまして。
 別のメーリングリスト(CML)で高田先生からこのホームページの件を教えてもらいました。
早く意見をお伝えすべきでしたが、すいません。

 さて、私は疫学(公衆衛生)の部門なので、この問題は大変な大問題になっています。
 特にご承知と思いますが、がん登録は最も大きな問題で、西ドイツであった実例では、プライバシー保護法ができた途端にがん登録の率が1割程度になってしまい、事実上崩壊したということがあります。このようなことから、がん登録は別に法律として定めるべきとの運動がされていますが、法律を作るのはなかなか難しくて...。

 まあ、がん登録に限らず、疫学の仕事は、ある集団を追いかけてどのような病気になるのかを調べる仕事です。すなわち、なんらかの手段を用いて作った名簿を、病気の名簿(カルテや、死亡診断書、住民基本台帳)と照合するということです。もちろん、研究成果をまとめて公表する場合は、個人の同定は全くできない、数字とグラフだけのものになりますが、照合は、その人の氏名、年齢、生年月日や住所が必要となります。
 同意をえた方だけやるべきだという議論もありますが、一般的によく知られている事実には、健康に関する調査に協力的な方は、健康意識が高く病気にはなりにくい(selection bias)という強烈な偏りが生じることが知られています。
 したがって、すべて厳格に同意が必要とされれば、そもそも公衆衛生に関するちゃんとしたデータは得られません。そんなものいらないじゃないか?ということを言われるかもしれませんが、じゃあ、今後どういう病気が増えてくるのか?その病気の原因は何か?どういう生活習慣をすると危ないのか?どうしたら防げるのか?ということは、なにもわからなくなるでしょう。
 なにもわからない時代に戻った方が幸せだというのであれば、それでもいいのでしょうが、それこそ国民全体の同意を得る必要があると思います。



1−1 ガイドライン作成メンバーからの回答<福見一郎 (翻訳家) 2000.1.14

中山様
 MIネット宛てのメール拝見致しました。私もMIネットの会員であります。
 ご指摘の点は医療の場におけるプライバシー保護を考えるに当たり、一つの大きな問題点であると私どもも認識しております。今回MIネットが作成したガイドラインを紹介する目的で近々医学専門誌に掲載される予定の「医療におけるプライバシー保護」と題する論文でも、この点について、「疫学調査、癌登録制度などの実施・運用にあたって、個人情報保護を余りに厳密に適用すると実質的に調査・運用が困難になるとの懸念を表明する向きもある。あるいは個人の医療情報が秘匿されることで公共の利益が損なわれる場合もありうる。こうしたケースにおいて個人情報保護の精神を貫きつつ、情報の有用性・公益性を生かすための工夫も必要と考えられる」という指摘を加えておきました。
 具体的にどうすべきかですが、米国の市民団体「患者の権利のための連合(CPR)」が提案している方法は、市民をはじめ幅広い層の代表者で構成される研究用医療情報利用監査機構(MRRB)を作り、治療開始時に同意した患者の情報をこの機構に集め、研究者はその研究計画、目的、方法などを明らかにしてこの機構に申請を行い、データを取得するというやり方です。ただこの方法でも、患者が自分の情報をMRRBに寄託することに同意しない場合には、selection biasが生じるおそれがあり、完全なものではないかもしれません。
 今後疫学の分野の方々とMIネットが協力して妥当なシステム・ルールを作り、国内、そして場合によっては国際的に提案していくことも考えられますね。




1999年12月12日  医療改善ネットワーク(MIネット)
連絡先:〒102-0083 東京都千代田区麹町6-6-1 麹町松尾ビル5階
プライム法律事務所  TEL 03-3221-7251  FAX 03-3221-7257
弁護士 藤田康幸 
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