平成12年9月1日


時代にふさわしい精神科医療を実現するために
−第4次医療法改正に向けて−


            公衆衛生審議会精神保健福祉部会
             精神病床の設備構造等の基準に関する専門委員会
               委員 池原毅和(全国精神障害者家族会連合会常務理事)
                  伊藤哲寛(全国自治体病院協議会常務理事)
                  岡谷恵子(日本看護協会専務理事)
                  金子晃一(日本総合病院精神医学会理事)
                  末安民生(日本精神科看護技術協会常任理事)


○精神病床における人員配置について
 精神科の入院医療については、他の診療科よりも医師や看護婦の配置が少なくてもよいとする、いわゆる「精神病院特例」があり、その人員配置基準は内科や外科などの他診療科に比べて医師約1/3、看護婦約2/3と低く抑えられている。これは精神病院が精神障害者の収容を主たる役割としていた時代の負の遺産であり、精神障害者に対する偏見を助長する一要因ともなっている。

 今や、精神障害の早期治療とリハビリテーションが期待される時代である。この障害者差別とも言うべき、旧態依然たる基準は早急に改善されるべきである。
 しかし、精神科医療の専門職、とくに医師は残念ながら不足しており、現時点で全面的に特例を廃止することは困難である。他診療科の入院病床なみの医師配置基準にしようとすると、36万床ある精神病床を1/3にするか、精神科医師数を3倍にする必要があるからである。
 そこでやむを得ず、まずは、手厚い治療を必要とすべき一部の精神病床において、医師や看護婦の配置を濃密にしていく施策をとる必要がある。
 現状の診療報酬制度でも、精神科急性期治療病棟や精神療養病棟などが定められ、精神病棟の機能による区分が少しずつ進んでいる実態がある。そして一部関係者からは「機能区分は診療報酬制度で行えば十分だ」との意見もある。しかし、強制入院制度などを含み、利用者が良質な病院を選択する機会の少ない精神科医療の現状では、経済的な誘導のみで人員配置基準等を決めることは望ましくない。どこに手厚い人員配置が必要であるか、法体系のなかに位置付ける必要があると考える。

○手厚い治療を必要とする精神病床
 医師や看護婦が手厚く配置されなければならない精神病床は、次にあげた機能を有する病棟とするのが適当である。

(1)急性期治療病棟入院料を算定している病棟
これらの病棟では、短期集中治療を必要とする救急急性期患者の治療を行っている。

(2)措置入院、応急入院、精神保健福祉法34条移送による医療保護入院の患者が入院する病棟
行政的に強制的入院となった患者が治療される病棟であり、高水準の医療を保証する必要がある。

(3)児童・思春期専門病棟
精神的発達段階に応じて、教育的な配慮も含めた複雑な治療プログラムが必要であり、医師・看護婦等の十分な配置が必須である。

(4)覚醒剤等の薬物依存患者のための専門病棟
薬物による精神運動興奮など激しい急性精神病状態の患者が多く、手厚い人員配置が必要になっている。

(5)一般病院精神科病棟
重症な身体疾患を合併する患者の治療には身体病治療と精神病治療の双方が必要で、手厚い人員配置で医療が行われているのが実状である。この病棟を有する病院は旧医療法上の総合病院程度の総合診療を行う機能を備えているべきである。

○手厚い治療を必要とする精神病棟の条件
 精神科医療においては「人手こそが治療の道具」である。手厚い治療が必要とされる精神科病棟では、医師や看護婦を内科や外科の病棟と同じ基準で配置すべきである。
 精神科医療における隔離や拘束が問題になっているが、できるだけそれを回避し、万全な診察や看護によって最小限とし、また早期に解除しなければならない。そのためには、医師や看護婦等を十分配置する必要がある。
 したがって、「医師は入院患者16人に対して1人、看護婦は2人に対して1人」が必要である。またそれ以外の精神病床においても看護婦の配置基準は入院患者3人に1人とすることが必要である。そして医師の算定は、その病棟での医療の質を担保するため、看護婦と同様に病院全体ではなく、病棟毎に行う必要があるのではないか。
 また「チーム医療」の観点から、医師や看護婦以外の専門職(精神保健福祉士、作業療法士、等)の配置についても検討する必要がある。
 なお、精神障害者の社会参加を進めるために、外来医療の充実も大切であり、医師数や看護婦数算定基準は内科などの他診療科と同等にすべきである。

○病床面積について
 精神科医療では、その治療効果を十分にあげるために、とくに療養環境の整備が重要である。一般病床や療養病床と同等に1人当りの居室面積を6.4平米とすべきである。

○精神病床の規定について
 現行の医療法施行規則第16条第1項第6号には「精神病室、感染症病室及び結核病室には、病院又は診療所の他の部分及び外部に対して危害防止又は感染予防のためにしや断その他必要な方法を講ずること。」とあるが、これは任意入院を原則とする開放的精神科医療の推進の妨げになる規定であり、精神障害者に対する偏見を助長する要因でもある。直ちに削除すべきである。
 また、医療法施行規則第10条第3号には「精神病患者又は感染症患者をそれぞれ精神病室又は感染症病室でない病室に収容しないこと。」とあるが、精神障害者の身体合併症治療の機会を奪うことにもなり、身体的合併疾患の早期治療を阻害する。この規定の見直しも必要である。
 第2回専門委員会で3人の参考人全員が、この二つの規定を廃止すべきであると意見を述べたところである。

○医療計画について
 精神病床は現時点で約36万床あり、精神疾患の受療率はすべての疾患のなかで第2位という多さである。それにもかかわらず、精神病床の医療計画は、精神病床より明らかに少ない感染症病床(約9万床)や結核病床(約3万床)と同様に、都道府県単位で医療計画が立てられている。
 速やかに2次医療圏単位の地域医療計画を立てられるようにすべきであるが、精神病床の偏在という現状を考えて、当分の間は現行の「精神科救急ブロック」などを精神科医療圏として、地域医療計画を策定すべきである。

 今回の医療法改正では、時代に相応しい精神科医療を実現するための、具体的な施策が検討されるべきである。公衆衛生審議会精神保健福祉部会への専門委員会報告書をまとめるに当たって、上記のような考え方に沿って十分に審議を尽くすべきであると考えるものである。
(以上)



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を回避し、万全な診察や看護によって最小限とし、また早期に解除しなければならない。そのためには、医師や看護婦等を十分配置する必要がある。
 したがって、「医師は入院患者16人に対して1人、看護婦は2人に対して1人」が必要である。またそれ以外の精神病床においても看護婦の配置基準は入院患者3人に1人とすることが必要である。そして医師の算定は、その病棟での医療の質を担保するため、看護婦と同様に病院全体ではなく、病棟毎に行う必要があるのではないか。
 また「チーム医療」の観点から、医師や看護婦以外の専門職(精神保健福祉士、作業療法士、等)の配置についても検討する必要がある。
 なお、精神障害者の社会参加を進めるために、外来医療の充実も大切であり、医師数や看護婦数算定基準は内科などの他診療科と同等にすべきである。

○病床面積について
 精神科医療では、その治療効果を十分にあげるために、とくに療養環境の整備が重要である。一般病床や療養病床と同等に1人当りの居室面積を6.4平米とすべきである。

○精神病床の規定について
 現行の医療法施行規則第16条第1項第6号には「精神病室、感染症病室及び結核病室には、病院又は診療所の他の部分及び外部に対して危害防止又は感染予防のためにしや断その他必要な方法を講ずること。」とあるが、これは任意入院を原則とする開放的精神科医療の推進の妨げになる規定であり、精神障害者に対する偏見を助長する要因でもある。直ちに削除すべきである。
 また、医療法施行規則第10条第3号には「精神病患者又は感染症患者をそれぞれ精神病室又は感染症病室でない病室に収容しないこと。」とあるが、精神障害者の身体合併症治療の機会を奪うことにもなり、身体的合併疾患の早期治療を阻害する。この規定の見直しも必要である。
 第2回専門委員会で3人の参考人全員が、この二つの規定を廃止すべきであると意見を述べたところである。

○医療計画について
 精神病床は現時点で約36万床あり、精神疾患の受療率はすべての疾患のなかで第2位という多さである。それにもかかわらず、精神病床の医療計画は、精神病床より明らかに少ない感染症病床(約9万床)や結核病床(約3万床)と同様に、都道府県単位で医療計画が立てられている。
 速やかに2次医療圏単位の地域医療計画を立てられるようにすべきであるが、精神病床の偏在という現状を考えて、当分の間は現行の「精神科救急ブロック」などを精神科医療圏として、地域医療計画を策定すべきである。

 今回の医療法改正では、時代に相応しい精神科医療を実現するための、具体的な施策が検討されるべきである。公衆衛生審議会精神保健福祉部会への専門委員会報告書をまとめるに当たって、上記のような考え方に沿って十分に審議を尽くすべきであると考えるものである。
(以上)



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