webzine 医療改善のために
第3号(2001年12月9日発行)
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<MIネットの現在>

プライバシー部会の成果と今後の課題   

福見一郎 (翻訳家)
(2001.11.29)  

 プライバシーに関連したMI-Netのこれまでの活動としては、1999年12月12日に作成した「医療におけるプライバシー保護」ガイドラインと2000年5月6日に提出した「ヒトゲノム研究基本原則(案)に関する意見書」(および同年5月30日に提出した要望書)を挙げることができる。

 前者については、webzine1号で詳しくふれたので、本号では後者について述べることにする。

 ヒトゲノム研究基本原則(案)は、近年急速に進展してきているヒトゲノム研究が人の尊厳と人権を損なうことのないよう適切な形で行われることを目指して、科学技術会議生命倫理委員会ヒトゲノム研究小委員会が作成したものである。意見公募に応じて20団体および72名の個人より意見が提出された。市民系団体としてはMI-Net以外にDNA問題研究会、優生思想を問うネットワーク、骨形成不全友の会、つばさの会(原発性免疫不全症候群患者と家族の会)が意見を述べた。MI-Netの意見の骨子は、(1)指針の基本的考え方の中で「自己情報コントロール権」に言及すべきこと、(2)インフォームドコンセントの形骸化をさけるべきこと、(3)倫理委員会の判断に過度に依存しすぎないようにすべきこと、(4)検体より得られたデータの使用について検体提供者の異議申立の道を残すべきであること、などであった。

 これらの意見を受けて、部分的に手直しされた同基本原則が2000年6月14日に最終決定された。MI-Netの主張も解説部分の中にいくつか取り入れられている(同意を得る際の説明をできる限り文書で行うべきこと、研究の便宜や省力化のためにインフォームドコンセント簡略化規定を悪用するのを戒めるべきこと、など)。この基本原則は、専ら研究を対象とするものとはいえ、ヒトの医学・生物学的情報の保護を規定した最初の本格的な政府指針であり、その意義は大きい。平成13年3月29日には、この基本原則を踏まえた詳細な実務指針として「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」が官庁再編後の3省庁(文部科学省、厚生労働省、経済産業省)により作成された(残念ながら、この指針への意見公募の際には、MI-Netとしての意見をまとめて提出するには至らなかった)。この倫理指針も上記基本原則と同じく研究のみを対象としており、治療や診断の場面におけるプライバシー保護指針の作成がいま求められている。

 現在国会で審議されている「個人情報の保護に関する法律案」(今国会での成立は断念され、継続審議になる予定)とそれに伴い予定されている「行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律」の改訂などにより、研究以外の治療・診断をもカバーするプライバシー保護のための基本法制が整備されることになるが、それに続いて医療を対象としたより詳細な法律(個別法)あるいは指針の制定が望まれよう。

 わがプライバシー部会の今後の大きな課題は、医療を対象とする個人情報保護個別法あるいは詳細指針の制定を促すこと、そのために、個別法や指針の青写真を提示し、市民主導でよりよきプライバシー保護体制が確立されるよう働きかけていくことであろうか。