webzine 医療改善のために
第3号(2001年12月9日発行)
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<東京都勤労福祉協会セミナーから>

治療はどう受ける−特にガンの治療について−  

小澤 邦久(医師)
(2001.12.8)  

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 ガンの話をすると暗くなりがちなので、まず奇跡的に回復した明るい話からしよう。この患者さん(写真)は、妊娠中の乳癌の全身転移で、余命が数週間と診断された。抗ガン剤治療で劇的に回復し、帝王切開で出産して退院された。現在はそのお子さんが10歳を超えるまでに成長し、本人も元気に暮らしている。

 ガンは、すでに日本の死亡率で一番多い割合を占めている。全体では胃ガンが減り、肺癌が増え続けている。他の先進国で減っている肺癌が増えているのは、たばこの規制が進まないことの影響だ。女性の場合には、子宮ガンが減っているが、乳癌は増えている。

 治療法も変化し、乳癌では胸の筋肉を含む周囲の組織を広範に切り取る定型的乳房切除術がすたれ、乳房温存療法が普及してきた。手術後の結果が大きく異なり、前者では後遺障害が残り、外見も変わってそれが本人にとっての苦痛になるが、後者では温泉旅行も安心して楽しめる(写真による比較)。

 20年ほど前にある患者を診察したところ、主要な肝臓ガンの他、肝臓全体に小さなガンが点在し、手術ができない状況だった。私はそれを告知し、患者は負担の重い治療を拒否して約1年余の残りの人生を全うして旅立った。これが、私が最初に治らないがんを告知をした患者で、実は私の父である。
このように見送ったが、遺された親族は、父の遺言で毎年の法事の代わりに供養のゴルフコンペをしている。

 患者が人生を全うし、適切な治療を受けるためには、医療情報の患者自身への開示がどうしても必要だ。治療方法を患者の代理で決定することはどんなに親しい配偶者、親子でもできない。本人のために真実を知らせない方がよいのでは、と考える人もいるが、事実を言うか嘘をつくかというのは倫理的に等価な選択ではない。原則的には事実を知らせることが正しい、という姿勢で臨むべきだ。

 残念だが、医師自身がまだ患者への情報開示に積極的ではない。私が行った群馬県内の医療機関へのアンケートでも、医療側がガン告知にたいして及び腰であることが見て取れる。しかし患者の方は2/3は手遅れでも告知をしてほしいと考えており、患者の意向が無視されているのだ。

 別の患者の話だが、ある医療機関で診断を受けたところ、子宮がんが強く疑われ、すぐに子宮全摘の手術が必要だということだった。了解を得て別の機関でセカンド・オピニオン(ある医師の診断をうけた後、別の医師の診断を受けて意見を聞くこと)を求めたところ、そちらでは悪性のようには思われないので、経過観察をしたら、という話であった。後者の診断にしたがって定期的に受診しながら様子を見ているが、まったくガンの徴候はない。実は、この患者は私の連れ合いだ。

 セカンド・オピニオンは絶対に必要だ。患者は、遠慮無く「別の医師の意見を聞きたいんですが、資料を貸してもらえますか」と聞いて良い。もし渋るようなら、その医師は見限って転医するべきだ。

 最後に、ターミナルケアの問題は重要だ。「死」に対する姿勢も問われることになる。ここでみなさんに次の詩を紹介したい。

                 ナンシー・ウッド著 金関寿夫訳 めるくまーる