webzine 医療改善のために
第3号(2001年12月9日発行)
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<東京都勤労福祉協会セミナーから>

救急医療の受け方−救急車が来るまで・乗ってから   

冨岡 譲二(医師)(栗岡による要約)
(2001.12.8)  

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 私(冨岡)は、九州のある県でうまれ、そこでは病気になっても近くに医者がおらず、診察も受けずになくなる患者がたくさんいた。そのことが医療に志すきっかけになったのかもしれない。救急医療の仕事に携わるようになって、数年前にはボリビアで2年間、救急医療のシステムを構築するという仕事に携わった。

 今日は、救急医療の利用の仕方について話したい。

 救急のコールは、東京の場合、救急センターにかかる。救急センターでは東京にある約200台の救急車の位置を全て把握している。コールがあった場合、最寄りの消防署の救急車でなく、直近の救急車が駆けつける。5分から7分で到着できる体制になっている。

 救急病院には一次、二次、三次のそれがあり、一次が基本的な処置をする医療機関で、肺炎・虫垂炎など手術・入院などが必要なものは二次救急の範囲にはいる。二次救急を担当するのは、一般の総合病院や国公立病院などである。三次救急は、生命の危険を伴うもの、心肺停止、大やけど、脳卒中、大けがなどを対象としており、(高度)救急救命センターを備えている。

 すべての患者が高度な医療機関に集中すれば、救急システムが機能しなくなる。医療システムを有効に利用するには、「軽い、緊急度が低い、という場合にまず一次救急にかかり、必要に応じて二次、三次救急の医療機関にゆく。そこでの治療が終わったら、ふたたび一次医療機関で継続治療をする」ということが基本である。

 日本の救急医療のしくみはかなり優秀で、たとえば現場到着までに米国では平均して10分程度かかるが、日本では5〜7分くらいである。また、人口の99%をカバーしている。しかし、二次救急が手薄だという問題点がある。

 救急救命士という制度が始まり、救急現場および車内である程度の処置ができるようになった。現在、全国で51.2%、東京では100%の救急車には救急救命士が乗っている。そのため、かつてと違って救急現場ですぐ患者を乗せて出発するのでなく、患者の状況を確認し、基礎的なデータを調べ、センター本部と連絡をとってどの病院に運ぶかを打ち合わせたりする。救急車がすぐに搬送を始めなくても心配することはない。

 救急救命士は、器具を用いた気道の確保(息をしやすくする)、輸液(点滴)、除細動(心臓への電気ショック)などの処置ができる。

 しかし、日本の救急医療にも問題が残っている。米国では、心肺停止の場合にも18%の人が蘇生しているのに、日本では数パーセントという状況である。これは、救急救命士の制度ができ、それがかなり普及しても変わっていない。ある調査では、1988年(救急救命士の導入前)に14.7%だった24時間後の生存率が、導入後の96年には9.6%であった。

 救急医療では、「救命の鎖」ということが言われている。たとえば心肺患者が発生した場合、「迅速な連絡」・「迅速な一次救命処置」・「迅速な除細動」・「迅速な二次救命処置」が連続して行われなければならない。「連絡」は119番制度の完備、「除細動」は救急救命士制度、「二次救命処置」は救急医療施設の充実で、すでに整った。欠けているのは「一次救命処置」の部分である。救急車が到着するまでのこの部分は、市民が担当する。つまり、救急の制度が改善されても、市民の応急手当の部分が重要だということだ。

 最近は、応急手当の講習会を受ける人も増えてきた。秋田市では市民向けの講習会を行い、また119番通報のさいに心肺蘇生法を教える、などの試みで、心肺蘇生施行率が30%に上がり、それに伴って社会復帰立も30%に達するという成果を挙げている。

 救急医療の改善のためには、市民の協力が不可欠になっている。