webzine 医療改善のために
第3号(2001年12月9日発行)
012

counter


<東京都勤労福祉協会セミナーから>

安全で良質な医療を受けるには   

五十嵐 裕美(弁護士)
(2001.11.30) 

 次の文章は、第5回の五十嵐さんの講演の要旨です。

1.医療を受ける

 病院を受診し,診療を受けるということの法的意味は,病院と患者との間で診療契約を締結するということです。病院は,医療水準に従って,最善をつくして診療を行う法的義務があるとされています。この法的義務に反した診療行為で患者に被害を与えるのが,医療事故であり,毎年多数の医療事故が発生しています。国内の正確な統計はありませんが,医療過誤訴訟が起こされる件数は,現在では,20年前の約6倍と急増しています。

2.患者の権利

 医療の現場では,古くはパターナリズム(父権主義)と言われる考えが支配しており,患者は,ただ医療を受ける客体として専門家である医師にすべてを委ね,万事、うまくとりはからってもらうのが最善の医療であると考えられていました。しかし,今日では,もちろん,このような古い考え方は妥当しません。患者は,十分な情報提供とわかりやすい説明を受け,自らの納得と自由な意思に基づき自分の受ける医療行為に同意し,選択し,あるいは,拒否する権利を有しています。

3.インフォームド・コンセント

 インフォームド・コンセントは,日本では「説明と同意」と訳されていますが,前述のとおり,患者の権利は同意にとどまるものではありません。しかし,自己決定の前提となるインフォームド・コンセントは重要であり,その内容や範囲は,判例上,次のように考えられています。

これらを十分知った上で,患者は,自己で決定できるのです。

4.医療情報の開示

 インフォームド・コンセント以外にも重要なものとして,カルテやレセプトといった医療情報の開示があります。医療情報は,患者自身のプライバシー(自己に関する情報をコントロールする権利)の範囲内にあり,これらは医療従事者ではなく患者のプライバシーそのものです。カルテ開示は,現在は発展途上であり,将来,法制化されるべきものと思います。開示された医療情報を前提に,セカンド・オピニオンを得る権利も納得できる医療を受けるための患者の重要な権利です。

5.与えられる医療から参加する医療へ

 安全で良質な医療を受ける方法に特効薬はありません。患者の権利を実践しながら,患者自身が主体的に医療に参加することによって,日本の医療の水準を引き上げていくことが必要でしょう。