◎裁判所・判決年月日 浦和地裁平成7年3月20日判決
◎事件名 インフルエンザ予防接種事故行政事件
◎要旨
小学校6年生の女児が昭和58年11月に二度にわたって受けたインフルエンザHAワクチン予防接種の後に重度の心身障害が生じた場合において、予防接種健康被害救済制度適用に際しての因果関係の判定に当たっては、一蓋然性が証明されれば足りるとし、副反応についての医学的合理性、接種から一定の合理的時期に発症、他原因よるものと考える方が合理的である場合でないことの三基準に照らして因果関係を認め、行政庁の不支給処分を取り消した事例
◎コメント
予防接種法16条に基づく医療費等の支給請求に対して、一般の損害賠償請求と同等の因果関係の証明を要求して不支給処分にした行政庁の判断を取消し、蓋然性の証明で足りるとした注目すべき裁判例
◎出典 判例地方自治142号62頁
△抜粋
「本件救済制度は伝染病の蔓延防止という公益目的のために強制的に行われる予防接種によって不可避的に発生する被害を簡易迅速に救済しようとするものであり、他方予防接種による副反応発生の機序は医学的にいまだ十分解明されておらず、そのため因果関係の医学的証明には困難が生ずることがあり得、右救済制度の制定及びその後の同制度の運用においても、因果関係の認定に当たっては右の点が考慮されていることを勘案すると、本件救済制度における因果関係の判定に当たっては、蓋然性が証明されれば足り、次の三基準に該当する場合は、厚生大臣は法一六条の因果関係を認定すべきものと解するのが相当である。
(1)当該症状が当該ワクチンの副反応として起こりうることについて医学的合理性があること(第一基準)
(2)当該症状が当該ワクチンの接種から一定の合理的時期に発症していること(第二基準)
(3)他の原因が想定される場合に、その可能性との比較考量を行い、ワクチン接種によると考えるよりも他の原因によるものと考える方が合理的である場合でないこと(第三基準)」