webzine 医療改善のために
第4号(2002年2月28日発行)
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<日本医大下顎骨手術後急死事件>

医療従事者の良心的行動を支援すること

粂 和彦(医師)

 MIネットは、主に医療を受ける側の立場の視点から医療を良くして行こうという活動を行っているグループです。日本では今のところ、医療に従事する側と、医療を受ける側を比べた場合、医療を受ける患者側の立場の方が圧倒的に弱く、MIネットの活動の中では、弱者である患者さんを支援することが、ほとんどでした。そのため、今回の件が最初に話題になった時にも、真の被害者は患者さんであり、たとえ医師が良心的に医療上のミスを告白したとしても、ことさらそれを支援する必要などはないし、もともと医療内容をありのまま患者側に告げるのは、当然のことではないかという意見も多く出されました。

 しかし、現実には、医療従事者が、自分の良心や社会的常識、あるいは法律・規則に従って、個人として、ある行動を取りたいと考えた場合、常にそうすることができるとは限りません。なぜなら、そのような行動の結果として、その医療従事者自身が、大きな不利益を被ることがありえるからです。そのためMIネットの目指すような良い医療を実現するためにも、医療従事者が理想的な行動を取りやすい環境を作っていくことが、とても重要だと考える人もいました。そのような考えから有志が中心になって作ったグループが、Some−CA「医療従事者の良心的行動を支援する会(https://www.some-ca.org/)」であり、その結成意図をホームページから、まず、そのまま紹介します。


 医療の場では、事故・過誤・副作用など患者に不利な事態が起きた時に、その存在自体が患者側に隠される例、そのほか患者側に知らされるべき事実が患者側に対して秘匿される例などが存在すると考えられます。しかし、その場合でも、患者側に事実を知らせたいと考える「良心」を持つ医療従事者も、かなり存在するはずです。

 ところが、医療従事者が自分の良心から患者側に事実を知らせたいと思っても、所属する医療機関や大学の医局との関係などによる制約、あるいは、それらを通じて自己にさまざまな不利益が及ぶ危険などから、真実を告げることが困難なことも多いと考えます。

 私たちは「医療従事者が事実をありのまま正しく患者側に告げることは、患者の権利を尊重した良い医療につながる」と確信し、上述のような状況の中でも、勇気を持って「事実を告げる」行為を「良心的行動」とみなし、その医療従事者を励まし、支援していくことが必要だと考えます。そのための活動をしていくために、この会を設立しました。


 現代医療においては、医療を受ける側、与える側という単純な図式による理解だけでは不十分で、特に大病院などの大きな組織の中では、個人の意思と、組織の意思が異なることは、日常的に起きうると考えられます。医療過誤・事故を考えた場合も、組織としてミスを認めても個人としては否定するという場合と、今回のように、個人としてミスを明らかにしても、組織として否定するという両方の場合があるでしょう。特に後者の場合、個人と組織の対立の中で、当然、個人は弱者になり、上に述べられているように、たとえ医療ミスをした医療従事者であっても、良い医療をめざすために、支援すべき事態があると考えています。

良い医療をめざすためのキーワードとして、情報公開と、説明責任という言葉が使われますが、「医療従事者の良心的行動を支援すること」は、個人個人の医療従事者が、この二つの実現をしやすい環境を作っていくと期待しています。