webzine 医療改善のために
第5号(2002年5月31日)発行

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○○市立○○中学校
○○さん

  医療事故についてに関するご回答

 この回答は、堀康司さん(弁護士)、山田牧さん(看護職・大学院在学中)、牧田篝さん(MIネット事務局)によってまとめられたものです。

2002年4月24日
医療改善ネットワーク有志

 本日は見学にお越し下さいましてありがとうございます。私たちの活動に関心を持っていただけたことを大変うれしく感じています。


 ご質問いただいた事項については、医療被害を実際に体験した人、医療現場で働く人、大学で医療の問題を考える人、医療過誤訴訟の代理人をする人など、私たちの会の有志が、さまざまな立場から、それぞれの視点を生かして、回答を考えました。

以下の回答が、医療事故の問題をより深く考える一助となりましたら幸いです。


■1 何が原因で起こるのか?

(1) 前提知識としての用語について

       (詳しくはこちらへ)

●医療事故(アクシデント):

  医療行為で患者が肉体的精神的被害を受けること(人身事故)。
 病院内においては、医療行為でなくても、歩行時に転んだ場合の被害も一応含め
 て考える。

  医療事故を、加害者の意思により二つのタイプに分けます。
 すなわち、「故意」の場合と「エラー」の場合(故意ではない。人為的な誤り全
 般を指す言葉として)です。故意の医療事故というのは犯罪ですので、これはと
 りあえず除外します。

  そして、エラーによる医療事故の原因として、

 を分けます。(「医療事故」安全学研究会訳 より)

  このミステイクをミスと略して呼んでいるのではないでしょうか。

 (2) 医療ミスの原因について

 (3) その他


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■2 今までにどれくらい起こっているのか?
■11 医療ミスによる死亡者数はどれくらいなのか?)

             11の問いについての短いコメントがここにあります。

  一般的に言って、小さな「ミス」はしょっちゅう起きますが、だれも問題
にしないために見逃されたり、隠されたり、簡単に許されたりします。こうい
うことまで入れると、「ミス」の数は数えきれないでしょう。

  この国では、カルテや検査結果を患者がなかなか見せてもらえないとか、
ある医師や看護婦の失敗を他の医師や看護婦が話すことが難しい、とかのため
に大きなミスでさえ、隠されることがよくあります。外に出てくるのは、ほん
の一部ですね。

 アメリカの病院の調査では、医療行為が原因で死ぬ人が4万数千から9万数
千人と言われていました。ちょっと乱暴な比較ですが、日本の人口がアメリカ
の約半分ですから、同じ割合で事故やミスで亡くなっているとすると、日本で
は何人が医療行為で死んでいることになるでしょう?

 これに対して、医療ミスの裁判が起こるのは、平成13年の1年間で805件と
なっています。訴訟の件数はこの10年で倍増していますが、推定される実際に
起きている医療ミスの数と比較した場合、ほとんど隠されている、ということ
ですね。

 ですから、これまで、あるいは1年に、何件起きたのかというようなことは
言えません。日本の場合言えるのは、医療過誤訴訟が何件あったということく
らいですが、これが起きているミスの数を正しく反映しているとはとても言え
ません。

 また、1件の大きな事故の陰には、29件の軽い事故、300件の同じような事
故に至る可能性のある 出来事(インシデント:ミス?)が起こると言われて
います。

  日本とアメリカは、医療のシステムも、働いている人の数も、入院してい
る患者さんの状態も大きく異なりますので、単純な比較はできませんが、かな
りの数の医療過誤が起こっている可能性は高いと考えられます。


■3 どれくらいの被害から訴えられるのか?

        この問題について、詳しくはこちら

  どんな小さな被害であっても訴えることはできます。
 ただ,現実に民事裁判で訴えることになるか否かは,いくつかのことを考慮して決
 定されていると思います。そのいくつかを書いてみます。

  第1に,割に合うかです。

  裁判をするためには裁判所に納める費用や,弁護士を立てる場合の費用などが必
 要となります。また細かいことですが,裁判所に行くための交通費や,仕事を休ん
 で行く場合の給料の減給などもあります。書類のコピー代,証明資料の手数料など
 もあります。

  これらの費用を出しても,勝訴したらそれを超える金額が賠償されるのでなけれ
 ば割に合わないからです。これらの費用も賠償してもらえれば良いのですが,必ず
 しも全額が賠償されるわけではありません。当然の事ながら,費用以外に多くの時
 間を訴訟のために割かなくてはなりませんから,その面でも訴えるか否かを考える
 ことになりますね。

  第2に,勝訴の見込みがあるかです。

  被害があっても,小さな被害の場合,相手に過失がないとか,賠償すべき損害が
 ないなどの判断をされることがあります。

  例として適切かどうか分りませんが,点滴の針を刺す際に,うまく血管に入れら
 れず,何度か刺すことがありますよね。看護婦さんによって上手い下手があるよう
 です。この場合1回で点滴ルートを確保するのに比べれば,何回も刺されるのは余
 分の痛みがあり,被害があると考えられます。しかし,血管が細くて確保しにくい
 場合には過失はないと考えられますし,1,2回のことであれば,我慢の範囲と言
 われそうです。

  第3に,医師や病院を訴えることによって受ける社会的地域的不利益の問題があ
 ります。

  地方に行くと,利用できる病院はそこしかなく,訴えることによって,自分は勿
 論家族までもが治 療を受けにくくなったり,近隣から悪く言われるなどの事実上
 の障害があって提訴を断念するケースもときどきあります。


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■4 訴えた時にどのくらいの金額を請求できるか?

  請求できる金額は、その事故で、その被害者が受けた損害の中身によって決まっ
 てきます。

  被害には、命を失う被害や、一生まともには働けない身体になってしまうとい
 う被害から、片足を失うという被害もあるし、あるいは、本当ならあと1年生き
 られたはずなのに、1ヶ月で死んでしまったという被害、手術をしなくても治せ
 る病気なのに、手術をされて、痛い思いをし、手術の傷跡も残ってしまったとい
 う被害など、本当にいろいろのレベルのものがあります。ですから、請求できる
 金額もそれぞれに違ってきます。

  そういう損害を金額に換算するには、いくつかの基準があります。損害計算の
 内訳といっても良 いでしょう。細かく説明をはじめると大変なので、大きな骨
 組みだけ説明します。

  損害の内訳には、大きく分けて、次のようなものがあります。

 (1) 実損害 

 (2) 休業損害

 (3) 慰謝料

 (4) 逸失利益

 というわけで、「どの程度の金額を請求できるのか」というおたずねに直
接答えるものとはなっていませんが、繰り返し言うように、損害の中身によっ
て、数万円の請求から、数億円の請求まで千差万別なのです。


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■5 医療ミスが起きたときの病院の対応策は?

             これについて、実例に基づいた説明をここで読めます。

■6 病院側がミスを隠した場合はどうなるのか?

 (1) 一般論として

 (2) 医療事故を体験し、その相談を受けるようになった立場から

     (以下の例については、こちらのほか、くわしくは
      https://www3.tokai.or.jp/shimizu/をご覧ください。)

■7 医療ミスを未然に防ぐ方法は?

         患者の立場からの自衛策についてはこちら

 (1) 医療従事者からみた医療ミスを未然に防ぐ方法

  ・初心者は間違えやすいという事を認識し、初心者向けの研修や訓練を重ねる。

  ・マニュアルやシステム通りにやっていたのに間違いが起こった。これはその
   マニュアルに間違いが潜んでいる可能性がある。

  ・そんな馬鹿な!と思えるようなエラーが重なって事故になる。これはスポラ
   ディックエラー(すでに経験が豊富な人が意識しないで行動しているときに
   起こるエラー)の可能性がある。スポラディックエラーは、一人では防ぎ得
   ない。周囲の人みんなで防ぐ努力が必要となる。

  ・エラーを起こさないように、エラーが起こったときにすぐに対処できるよう
   に、エラーによる被害を最小限に食い止めるために・・・・

 (2) 医療を受ける側としての自衛策として・・

            これについてより整理された回答はこちら

■8 医療ミスについての法律はあるのか?

   色々な法律があります。

 間違って人の体を傷つけてしまえば、刑法で処罰されます。業務上過失傷害
罪、もし患者さんが医療ミスの結果死んでしまえば、業務上過失致死となって、
最大5年間の刑務所行きということもあり得ます。

 刑罰だけでなく、患者さんやその遺族がミスをしたお医者さんや病院に、損
害賠償を請求することもでき、これは民法という法律で決まっています。お医
者さんに過失があったかどうか、そのミスと病気が悪くなったり死んでしまっ
たりした結果との関係があるかどうかなどが問題になります。

 さらに、重大なミスをしたお医者さんの免許を取り消すという処分がありえ
ます。これは医師法という法律に定められていて、医道審議会というところの
意見を聞いて厚生労働大臣が行います。

 ただ、医道審議会で処分される医師は、医療ミスをした人よりも、別の犯罪
(殺人、詐欺、診療報酬の不正請求、覚せい剤等の使用など)を犯したという
ことで処分される人が圧倒的に多く、例えば2001年の6月には28人が処分
されていますが、医療ミスに関連する人はそのうちの3名にすぎなかったと報
道されています(2001/5/31 毎日新聞)。

 現在の医道審議会では、刑事処分が確定した場合に処罰を行うという運用が
なされているため、実際に重大な医療ミスを犯したとしても、刑罰を科される
ことは事例としてさほど多くありませんので、医療ミスを理由として医道審議
会で処分される人数もそれほど多くはありません。


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■9 医療ミスが発覚するまでにどれくらい時間がかかるのか?

  医療ミスにはたくさんの種類があります。別の患者のための薬を注射して
しまったとか、薬の量を間違えてしまった、左足を手術するはずだったのに右
足をしてしまった、二人の患者で一人は肺、一人は心臓の手術だったのに反対
にしてしまった、心臓手術をしているあいだ心臓の変わりに血液を流すポンプ
の操作を間違えてしまった、患者に酸素を送るはずだったのに麻酔ガスを送っ
てしまった、などなど、かぞえきれません。これらのミスの種類によって見つ
かり方も違います。また、同じようなミスでも、たとえば医師が良心的で患者
やその家族にすぐ伝えることもあるでしょうし、逆に最後まで伝えないことも
あるかもしれません。ですから、9番の質問にも決まった答えはないんです。


■10  医療ミスがすぐに発覚しないケースはどれくらいあるのか?

 起きてすぐ発覚するケースもあれば、見つかれば「ミス」だと言われるのに
結局ずっと見つからなかった、ということもありそうです。

 ひとつ言われている問題は、医療が密室の中で行われるために、誰に見つか
るかが問題だということです。手術をしている医師が「間違えた」とわかって
も他の人には言わないかもしれません。

 そこで手伝っていた看護婦さんが間違いに気づいても、誰にも伝えないかも
しれません。看護婦さんが病院の院長に報告しても、院長が握りつぶすかもし
れません。患者さんに、これこれこういうミスをしました、と医師や病院に伝
えても、一生懸命誤ったので患者さんが許してくれて、新聞に言ったり厚労省
に報告したりしないことがあるかもしれません。どの段階でだれが知ったら
「発覚」というのか、難しいことはわかってもらえますね。


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■12 医療ミスを起こしてしまった医者はどうなるのか?

      医師に対する行政処分を行う医道審議会についてはこちらへ

 (1) 一般論について

 (2) ある事例について

          (この例について、詳しくはhttps://www3.tokai.or.jp/shimizu/
           をご覧ください。)

 (3) 補足として


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■13 医療ミスで裁判を起こして解決するまでの時間は?

 (1) 一般論について

 (2) 具体的経験について

                (以下の例について詳しくはこちらへ)


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■■ 最後に ■■

 ぜひ考えていただきたいことについて

 (1)「何がミスか」は、判断が難しい

 (2)「誰のミスか」を決めるのも簡単ではない

 (3)再び「医療事故の原因」について


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 これで終わりです。お疲れさまでした。