この国は、サリドマイドやスモン、薬害エイズなど、悲惨な薬害の歴史を持っています。そして、単に薬害事件が繰り返し起きたのみならず、一つ一つの薬害が諸外国と比べて大きな被害をもたらす傾向があります。そのなかで多数の被害者が傷つき苦しんできました。
1999年10月22日、薬害被害者の団体が集まり、全国薬害被害者連絡協議会(全薬被連)が結成されました。薬害被害を根絶するという目的に向かって、被害者の運動は一歩ずつ進んでいます。しかし、残念なことにその成果は十分とは言えません。被害者のみならず、市民の立場での運動を広げる必要があります。
薬害の根絶という課題のためには、その被害の実態と原因を明らかにすることが不可欠です。これは、本来ならば国が責任を持つべきことがらですが、ご存じのように国はこのような課題を追求はしてきませんでした。国は、薬害を記録し解明する営みを被害者や少数の個人に任せたままです。たとえば、全薬被連が指摘するように、教科書には初中等教育を通して薬害に関する記載がほとんどなく、子どもたちに薬害被害とその原因がしっかりと受け継がれる状況にはありません。
このような状況のなかで、私たちMIネットは、薬害の歴史や被害の実態を克明に記録し、資料の集積を図ることによって、薬害の原因の解明と根絶に資することをめざし、1999年12月15日に薬害資料館(ネット版)を開設・公開いたしました。
全国薬害被害者連絡協議会に結集する被害者団体は、1999年10月23日に東京・目黒区で薬害根絶フォーラムを開き、薬害被害についての教科書記述の問題を取り上げました。この集会に参加したMIネットの会員から、薬害を記録し解明するための資料館ないし博物館が必要だとの声が「医療と人権」(MHR)メーリングリスト上に表明されました。たちまち、幅広い市民が協力して医療の改善をめざそうとする医療改善ネットワーク(MIネット)の活動としてふさわしいものだと賛成の声がMHrおよびMIネットに寄せられ、MIネットに薬害部会をつくり、当面ネット上での資料館の開設をめざすことになりました(詳しい経過については「薬害資料館の歩み」を、MIネットについては次ページおよびhttps://www.mi-net.org/index.htmlをご覧ください。「医療と人権」(MHR)MLについては、弁護士藤田康幸氏のサイト「プライム・ロー」https://www.ne.jp/asahi/law/y.fujita/をご覧ください。)。
インターネット上にはすでにいくつかの薬害関連サイトがありますが、私たちは継続的・包括的な活動をめざし、薬害の被害者やその団体、および薬害に関心をもつ人々が情報を蓄積・交換する資料館とともに、情報や意見を交換する広場を作りたいと考えています。とりわけ、被害・支援団体関係者、弁護士や医師など市民・専門家が多数参加しているMIネットの特長を生かして、被害記録の蓄積と公開に加え、判例分析や被害分析、薬害の構造分析、そして関係者間の交流などの頁を充実させてゆきたいと考えております。
もちろん、ネットでの資料の蓄積と公開は保存性や信頼性などの点で十分ではなく、最終的には資料の蓄積と公開、および研究を行う施設を作る必要がありますが、薬害資料館(ネット版)はそれに向けての第一歩と位置づけたいと思います。
以上の趣旨と経緯に賛同いただける方は、是非この資料館にお力添えくださるようお願い申し上げます。当面、以下の点についてご協力いただける方は、ご連絡ください。