医療事故防止委員会要綱

                   1999年11月6日

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 医療改善ネットワーク(MIネット)は、医療事故を防止するための活動をしていきたいと考えています。そして、それぞれの医療機関や医療従事者が医療事故防止のための活動を進めていくことを期待しています。具体的には、医療機関内に医療事故防止委員会を作っていただいて、種々の活動をしていくことが望ましいと思います。
 実際にどのようにして設置し活動していけばよいのかがよくわからないという声もありますので、医療改善ネットワーク(MIネット)として医療事故防止委員会要綱を作りました。
 これを参考にしていただいて、各医療機関の実状に応じて医療事故防止委員会を設置され、医療事故防止のための活動をされるよう期待します。
 なお、この要綱作りは1999年4月から始めて、1999年11月6日に公表しました。
 「このような条項を盛り込む方がよいのではないか。」「このように変更する方がよいのではないか。」など、ご意見等がありましたら、よろしくお願いします。

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  ○○病院 医療事故防止委員会要綱

                 制  定  ○年○月○日
                 最終改正  ○年○月○日

(目的及び設置)
第1条 当院における医療事故の防止を図るため、医療事故防止委員会(以下「委員会」という。)を設置する。

(解説)
 本条は、院内における医療事故の防止を目的として、医療事故防止委員会を設置することを定めている。
 なお、この要綱は、院内における将来の医療事故の防止のためのものであり、発生した医療事故に対する対応に関する事項は対象としていない。将来の医療事故の防止に関する事項と既に発生した医療事故に関する事項は基本的に性格等が異なるためである。
 ただし、既に発生した事故を分析して将来の医療事故の防止を図ることは必要なので、その限度で発生した医療事故に関する条項を含んでいる。

(所掌事項)
第2条 委員会は、前条の目的を図るため、次の事項を所掌する。
(1)院内において発生した医療事故又は発生する危険があった医療事故についての情報の収集
(2)医療事故の防止に役立つ資料の収集
(3)医療事故の防止のための具体的対策の検討及び推進
(4)医療事故の防止のための研修及び教育
(5)その他,医療事故の防止に関する事項

(解説)
 本条は、委員会の所掌事項(担当し任務とする事項)を定めている。
 (1)号は、院内において現実に発生した医療事故及び医療事故が発生する危険があった事例(ニアミス、ヒヤリ・ハット経験)が将来の医療事故の防止のための大きな教訓になることから、医療事故及びニアミス等の情報の収集が重要であることに基づく。<第7条・第8条参照>
 (2)号は、他の医療機関等における医療事故やニアミス等例も院内における将来の医療事故の防止に役立つことから、ニュース、文献、学会報告などを収集することを意味している。<第9条参照>
 (3)号は、前2号により収集した情報に基づいて、医療事故の防止のための具体的対策を検討・立案し、それを様々な方法により職員に徹底させることを内容としている。<第7条〜第9条参照>
 (4)号は、医療事故の防止のためには、平素から職員に対し研修及び教育を行う必要があることに基づく。
医療事故を防止するための具体的方策を検討し、それを職員に徹底させることなどを含んでいる。<第10条参照>
 (5)号は、以上のほかにも医療事故の防止のための各種の活動を行うためである。<第11条・第12条参照>

(委員等)
第3条 委員会は、院長が任命する次に掲げる者をもって構成する。
(1)医師        ○名
(2)看護婦又は看護士  ○名
(3)薬剤師       ○名
(4)その他の医療職の者 ○名
(5)事務職の者     ○名
2 院長は、院外の者で医療事故の防止に関し知識・経験等を有する者を特別委員に任命することができる。
3 委員の任期は2年とし、再任を妨げない。ただし、補欠の委員の任期は,前任者の残任期間とする。

(解説)
 院内における医療事故は、各部門で起こりうるし、また、複数の部門・職種との連携の不備等によって起こりうるので、幅広い部門・職種から委員を選出することが望ましい。
 診療科別では、内科のほか、医療事故が発生した場合は重大な結果をもたらしやすい外科・麻酔科・産科などからは委員を選出することが望ましい。
 医師のほか、看護婦又は看護士、薬剤師の委員は必須である。
 特別委員には、いわゆる学識経験者、患者代表など、市民の代表者が考えられる。

(委員長等)
第4条 委員会は、委員の互選により、委員長1名及び副委員長1名を選任する。
2 委員長は、委員会を統括し、委員会を代表する。
3 委員長に事故あるときは、副委員長が委員長の職務を代行する.
4 委員会は、委員の中からリスク・マネージャー○名を選任する。
5 リスクマネージャーは、定期的に院内を巡回し、職員からの事情聴取、職員に対する指導、施設・設備等の点検を行う。

(解説)
 リスク・マネージャーをおくことが望ましい。
 なお、大阪府八尾市の八尾総合病院のリスク・マネージャーに関して、以下の読売新聞の記事を参照。
https://www.yomiuri.co.jp/life/hensyu/0424sr11.htm

(会議等)
第5条 委員会の会議は、委員長が召集し、議長にあたる.
2 定例委員会は年6回以上開催する。なお、委員が求めたときは、随時臨時委員会を開催する。
3 委員会は、会議を開いたときは議事録を作成しなければならない。議事録には委員長及び副委員長が署名押印をする。
4 委員会は、必要に応じて以下の小委員会を設置することができる。
(1)○○科事故小委員会
(2)看護事故小委員会
(3)薬剤事故小委員会
(4)医療機器事故小委員会
(5)その他の医療事故に関する小委員会
5 委員会は、必要に応じて、委員以外の者に対し、会議への出席、意見又は資料の提出を求めることができる。
6 調査委員会の庶務は、○○課において行う。
7 委員長及び副委員長は、委員が職種・職位等にかかわらず自由に意見表明等ができるように努めなければならない。

(医療事故)
第6条 委員会は、院内で医療事故が発生した場合には、その大小を問わず、事実関係の把握のため、関係者に対し、報告又は資料の提出を求めることができる。
2 委員会は、前項の報告、資料等に基づき、事故原因を分析して将来の医療事故の防止策をまとめ、それを職員に徹底しなければならない。

(解説)
 第2条(1)号に属する活動である。
 既に発生した医療事故は将来の事故を避けるための最大の教訓に満ちているはずであるから、そのために情報の把握、原因の分析、将来の防止策をまとめて、それを職員に徹底させるべきである。

(ニアミス等)
第7条 委員会は、、ニアミス報告書の書式を定め、職員に対しニアミスの報告を行うよう求める。
2 委員会は、ニアミス報告書を検討し、教訓及び事故防止策を職員に徹底させなければならない。
3 委員会は、職員がニアミス報告書を随時閲覧できるようにする。
4 委員会は、職員が自己に関するニアミスを報告したことのみをもって不利益な処遇を受けないように配慮する。

(解説)
 第2条(1)号に属する活動である。
 1項・2項は、医療事故には至らなかったが医療事故の危険があった事例(ニアミス、ヒヤリ・ハット経験)の報告及び検討が将来の医療事故の防止に非常に役立つことに鑑みて、その事例の報告を職員に求め、その報告に基づいて、将来の医療事故を防止する趣旨である。
 3項は、職員がニアミス報告書をいつでも閲覧できることにより、将来の医療事故を防止する趣旨である。
 4項は、ニアミスを報告したこと自体により不利益な処遇を受けるとすると、報告が行われにくくなるので、そのような事態を防止する趣旨である。ニアミスを報告すべきであるのに報告しなかったことについて不利益な処分等を受けることはやむをえない。
 ニアミス報告書の書式案に関しては、ここをクリック 
 ニアミス報告書の記載は抽象的では役に立たないので、具体的な記載が行われるようにすべきである。この点につき、以下の読売新聞の記事を参照。
https://www.yomiuri.co.jp/life/hensyu/0424sr11.htm

(資料の収集等)
第8条 委員会は、医療事故の予防に役立つ資料を収集し備え置かなければならない。
2 委員会は、前項により収集した資料に基づき、教訓及び事故防止策を検討し、それを職員に徹底させなければならない。
3 委員会は、第1項により収集した資料を職員が随時閲覧できるようにしなければならない。

(解説)
 第2条(2)号に属する活動である。
 院内における医療事故・ニアミス等のほか、医療事故・ニアミスに関する報道例、学会報告、文献等の資料は院内における医療事故の防止のために役立つことから、それらの資料を積極的に収集し、収集した資料を職員がいつでも閲覧できるようにする趣旨である。
 備え置くべき資料の例としては、例えば、「医療事故防止関係資料リスト」(弁護士藤田康幸編)を参照。

(研修・教育)
第9条 委員会は、医療事故防止のため、適宜次の研修会を開催する。
(1)全職員を対象とするもの
(2)各職場からの出席者を対象とするもの
(3)特定の職場の職員を対象とするもの
2 委員会は、各職場での会議を通じて、医療事故防止策が全職員に徹底するよう努める。
3 委員会は、新たに採用された職員や新たな職場に異動した職員に対し、医療事故の防止のため必要な事項を教育する。

(解説)
 第2条(4)号に属する活動である。
 研修・教育は医療事故の防止のために必須である。職種ごと、職場ごとに研修・教育の機会が確保できるようにしたい。
 新採用・異動等の場合には研修・教育の内容に医療事故の防止に関する条項を盛り込むべきである。

(医療事故防止マニュアル)
第10条 委員会は、医療事故防止マニュアルを作成し随時改訂するよう努め、その内容が職員に徹底するよう努める。

(解説)
 第2条(5)号に属する活動である。
 すぐには網羅的な「医療事故防止マニュアル」を作成できないと思われるが、委員会の活動を通じて作成するようにしたい。

 

(民主的な人間関係の形成)
第11条 委員会は、職種・職位等にかかわらず、職員が医療事故の防止に関して自由に発言できるように努めなければならない。

(解説)
 医療事故は、医療従事者の間において、「おかしいな。」「ちょっと変だな。」などと思ったことが自由に発言できることによって防止できることがある。したがって、自由に発言できる民主的な人間関係を形成することが必要である。

(情報の取扱い)
第12条 委員会の委員及び特別委員は、その職務に関して知りえた事項のうち一般的な医療事故防止策(他の医療機関等にも参考になる事項であって、関係する個人が特定可能でないもの)以外のものは、委員会の承諾なくして院外の第三者に公開してはならない。
2 委員会の委員及び特別委員は、患者のプライバシーを尊重しなければならない。

(その他の事項)
第13条  この要綱に定めるもののほか,必要な事項は委員会が定める。    

附則
 この要綱は、○年○月○日より施行する。


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